(免責事項)
本ページの内容には高温・高電圧を発生する物があります。工作・使用は自己責任で行ってください。

回転式管状雰囲気2ゾーン電気炉



縦向きと横向き
(概要) 金属間化合物のフラックス法単結晶育成に真価を発揮する予定の、高温雰囲気SiCマッフル炉。 炉室全体をステンレスの筐体で覆っているので、多孔質炉心管で雰囲気炉が作れて経済的です。 炉心管を通しての酸素透過の心配がないので、長時間の結晶育成に向くと思われます。 また、回転式なので、フラックスの分離が簡単にできます。 あと、マッフルのおかげで消費電力が少なく、エコです。昨今の電力事情にもやさしいです。 縦方向温度勾配の付加によって、NMR測定用の大型単結晶育成を行う予定。
Specifications
常温〜1400℃(最高限界温度1600℃)
炉室φ30x170(2ゾーン)
省エネ(1200℃キープ時500W)
炉なんてほぼヒーターと断熱材だけでできているのに市販品は高いんですよ。縦型+ゾーン炉になると桁が上がりますし。 というわけで、小型のシリコニット炉を作りました。全体を金属で密閉しているので、雰囲気や毒物とかに対する安心感があります。
断熱材(マッフル)は、高温部はアルミナ繊維系のイソウール1600成形品で炉心管内も含めてほぼ隙間なく埋めている。 その外側は、低温での断熱性に優れたイソウール1400ブランケットを使用している。 発熱体は、炭化ケイ素SiCの複ら管型シリコニットヒーター DSp22の短縮特注品を2本使用。 炉体はほぼ全体にわたってSUS304の溶接だが、ヒーターを取り出すために取り出し部は半田付け。 温度コントローラーは、2チャンネルのプログラムタイプ( E5AR-TC43DW-FLK)を使用し、 電力調整器SSNP-25F2個でサイリスタ位相制御している。 新品のヒーターは低抵抗なので力率は非常に悪いが、この程度の電力でPWM制御はコスパが悪いので仕方ないと考えている。

図1:R型熱電対と管内マッフル
NW40で試料が出し入れできるので楽なはず。縦置き時には、マッフルの上に試料を置く。

図2:本体下部
電極取り出し部を放熱するために、銅棒+アルミナ菅+銅管+アルミ放熱板で空冷している。 1000℃以下では自然空冷でOKだが、それ以上で安心して使用するにはファン(扇風機)が必要。


図3:断面図(pdf)
炉体を立てた時の断面。最高温部は1600℃対応の成形断熱材(マッフル)、 そうでない部分は1400℃対応でより断熱性の良いセラミックブランケットを使用している。

図4:横置き時の試料空間の温度プロファイル
左側の熱電対(-8.5cmの位置)のみで矢印の温度に温調を取って測定。 熱電対が端でマッフルに埋まっているのと、シース熱電対の為、中心と100℃以上の温度差がついてしまっている。 熱電対が飛び出すように改造したほうがいいかもしれない。 ただ、温度均一帯は管状炉としては広いと思う。

図5:TIG溶接中の私
物性研のとある工作室には共用の溶接機があったりする。 ルーズな長袖で作業したせいで手首を紫外線焼けしてしまった。

図6:ステンレス円筒の溶接部
材料にはSUS304TP-A溶接管とSUS304レーザーカット円板を使用。 TIG初心者なので、とりあえず付いているだけ。アルゴン溶接なのに酸化し過ぎな気がする。

プロトタイプ白金ヒーター版

白金線をけちりすぎて、寿命が短く(20回程度)、失敗。ガラクタ行き。
Specifications
常温〜1400℃(最高限界温度1600℃)
可変定電流型AC-ACコンバータ、80V 6A、2回路
炉室φ30x170(2ゾーン)
超省エネ(1200℃キープ時350W)
ヒーター部を小さくするために、白金−ロジウム合金線(Pt87Rh13、融点1850℃)を使用している。 この炉にも使用している、R型熱電対の+側と同じ素材。 ただし、この白金−ロジウム合金線は、常温から1600℃にかけて抵抗率が3倍変化するので、通常の定電圧ON/OFF制御は使用できない。 スライダックではプログラム運転できないのと、できるだけヒーターに優しい制御を指向して、 定電流モードのAC-ACコンバータ(160kHz PWM, MOS-FET)をPID制御する。 当たり前のことだが、白金は高いので、特に最近高いので、とてもギリギリまで線材料を減らしており、φ0.2x5mで済ませている。 発熱密度は輻射熱による放熱限界を超えてしまっているため、線を熱伝導のよい緻密質アルミナ円筒(ニッカトーSSA-S, 25W/mK)に巻いた上でアルミナ接着材(Aremco Ceramabond 503)で覆っている。
300W強(150Wx2)で4時間で1100℃まで昇温可能。

図6:緻密質アルミナ円筒に白金ヒーターをトロイダル巻したヒーターブロック
2方向に半周ずつトロイダル巻して、並列接続しており、片方向に電極を出している。 線材を最小限に抑えたので極めて疎。

図7:マッフルとニッケル電極を付加したヒーターアッセンブリ
低温側はニッケル被覆銅棒。 白金とニッケルはマッフル中程で溶接している(アルミナ接着剤で覆われているため見えないが)。


図8:コントローラ/基板の写真

図9:可変定電流型AC-ACコンバータの回路図(pdf
電流モードPWMスイッチングレギュレータを帰還無しに使用し、AC電源の電圧値と制御値の積を電流リミットとして与えている。 とりあえず、8Aの正弦波出力には成功。ただ、ハイサイド側MOS-FETを安直にP-chにしてしまった為、ミラー効果のせいでスイッチング速度を制限されてしまった。発熱が多く、ファンレスには出来なかった。N-chのブートストラップ駆動にするべきだった。あと、セラミックコンデンサの鳴きが非常にうるさい。630V品にするべきだった。 シリコニット版には出力が足りないのと、改良するには作り直しになるので、ガラクタ行き。


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